マルチアカウントにおけるサーバー利用の注意点
[Tuesday, May 08, 2001]
複数のアカウントや複数のメールアドレスを設定してARENAを利用する場合には、お使いのプロバイダーがメールサーバーのセキュリティに対してどのような方針を取っているのかを正しく理解する必要があります。
設定や条件によっては、メールが送信できないということがあり得るからです。
以下では、ダイアルアップで利用するプロバイダーを例に、主にメール配送時におけるセキュリティの問題について解説します。複数のアカウントや複数のメールアドレスを使っている方は、ここで説明する内容をよく理解するようにしてください。
- SMTPとPOPの違いを再確認
- まず、インターネットメールを使うには、2種類のサーバーを利用している、ということを再確認してください。メールを「送信」するときには「SMTPサーバー」、メールを「受信」するときには「POPサーバー」という種類の、別の種類のサーバーを利用します。
一般には、これらの2つのサーバーは同じコンピューター上で動作していることが多く、ひっくるめて「メールサーバー」と呼ぶことも多いのですが、「送信」と「受信」には別々のサーバーソフトを使っているのだということを理解してください。
もしこの話題について理解に自信がなければ、検索サイト(GooやInfoseekなど)で、「電子メール」「しくみ」「SMTP」「POP」などの言葉を複合検索してみてください。Web上には親切なガイドがいくつか公開されています。
- SMTPサーバーの利用制限を理解しよう
- ARENAがメールを送信するときには、現在の「サーバーセット」で選択されているSMTPサーバーに接続して、送信を依頼します。ですが、お使いの環境やARENAの設定によってはSMTPサーバーが送信作業を受け入れてくれないことがあり得ます。
多くのプロバイダーでは、SMTPサーバーの不正な利用を防ぐために、各種の利用制限をかけているからです。
SMTPサーバーをどのような方針で運営しているかは、お使いのプロバイダーの方針によりますので、詳しくはプロバイダーのサポート窓口までお問い合わせいただきたいのですが、以下では、一般的な事例について説明します。
1. 別のプロバイダーから接続するとSMTPサーバーが利用できない例(IPアドレスによる制限)
このタイプのプロバイダーでは、そのプロバイダーのアクセスポイントに接続しないとSMTPサーバーを利用できないように制限しています。具体的には、PPPアクセス時に与えられるIPアドレスの範囲によって、SMTPサーバーの利用を制限するものです。
これが原因になってメールが送信できない場合には、使いたいSMTPサーバーを提供しているプロバイダーに接続し直すか、サーバーセットを切り替えて、現在接続しているプロバイダーのSMTPサーバーを利用するようにしてください。
※ただし、そのSMTPサーバーのローカルでメール配信が完了する場合には、この制限は適用外となります。そのため、この例が原因でメールが送れない場合には「メールが送れたり送れなかったり」することがあります。
2. メールのFrom: またはTo: がそのプロバイダーでないとSMTPサーバーが利用できない例(ドメイン名による制限)
多くのプロバイダーでは、そのプロバイダーのドメイン名に関係のないメールの配送を行いません。つまり、送信人か宛先人にそのプロバイダーのドメインが書かれていなければ、SMTPサーバーは送信を受け付けません。
ARENAでは、差出人を自由に設定することができますので、この制限にひっかかってメールが送れないことがあり得ます。そのようなときには、差出人をSMTPサーバーを提供しているプロバイダーのドメインのものに設定するか、もしくはサーバーセットを切り替えて別のSMTPサーバーを利用するようにしてください。
3. 別のプロバイダーからの接続でもSMTPサーバーが利用できるが、送信前にPOP認証が必要となる例(POP認証による制限)
最近増えているのが、ユーザー認証を行えば、上記の1.や2.のような制限がないプロバイダーです。つまり、正規のユーザーであることがわかれば、どこからどのような設定で送ってもいいではないか、という方針です。
こうしたプロバイダーでは、1.と違ってそのプロバイダーからの接続でなくてもSMTPサーバーが利用できますが、その際にはPOPサーバーに一度接続してユーザー認証を行い、その後すぐに(通常は認証後数分の間に利用が有効となる)SMTPサーバーを利用する、という手順を取ります。
ですから、このタイプのプロバイダーの場合、POPサーバーの認証ができていない段階で、他のプロバイダー経由でメールを送ろうとしても、このSMTPサーバーは受け付けてくれません。
そのため、送信する場合には、ARENAの「すぐに送信」(即時送信)ではなく、一度「送信待ちに入れる」を行って、「メールをチェック」を実行する必要があります。「メールをチェック」コマンドは、まずPOPサーバーに接続してユーザー認証を行い、メールがあれば取得して、さらに送信待ちメールがあればそれらを送信します。
【参考】SMTPサーバーに接続する前に、POPサーバーの認証を受けるように設定しておくと、上記の手間を省くことができて便利です。詳しくはARENAヘルプの「SMTPの詳細設定」のページにある「POP before SMTP」の項をご参照ください。
4. 上記の条件が組み合わさった例
プロバイダーによっては、上記の1.〜3.を組み合わせた、セキュリティに配慮したところもあるかもしれません。上記の説明をよくご理解のうえ、適切な方法でメールの送信を行ってください。必要に応じてプロバイダーの方との相談も必要かもしれません。
- POPサーバーの利用制限
- POPサーバーの利用には必ずパスワードによるユーザー認証を伴いますので、アクセス元などによる利用制限はSMTPと違ってシンプルなのが普通です。一般に、そのプロバイダーのアクセスポイントからの接続でなくても、POPサーバーの利用を認めているケースが多いようです。
- 参考資料
- 以下の内容は、2001年2月の時点で調査したものです。
So-net
So-netの国内アクセスポイント以外からインターネットに接続して、So-netのSMTPサーバーを使ってメールを送信する場合は、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。送信は、受信操作後10分以内に行う必要がある。
@nifty
メールのFrom: に記載されているメールアドレスが、@niftyのメールアドレスでないと判断される場合、@niftyのSMTPサーバーを使ってメールを送信することができない。また、@niftyの国内アクセスポイント以外のネットワークから、@niftyのSMTPサーバーを使ってメールを送信する場合は、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。送信は、受信操作後10分以内に行う必要がある。
DTI
DTIのアクセスポイント以外からインターネットに接続して、DTIのSMTPサーバーを使ってメールを送信する場合は、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。送信は、受信操作後20分以内に行う必要がある。
ODN
ODN外部からメールを受信することはできるが、ODN外部からODNのメールサーバーを利用してメールを送信することはできない。ODNの国際ローミングのアクセスポイントから、ODNのSMTPサーバーを使ってメールを送信する場合は、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。受信操作を行った後20分間は送信が可能になる。回線を途中で切断した場合には、再度POP認証を受ける必要がある。
リンククラブ・インターネット
リンククラブ以外のネットワークからメールを受信することはできるが、リンククラブ以外のネットワークからリンククラブのSMTPサーバーを利用してメールを送信することはできない。
IIJ4U
IIJ4Uのアクセスポイント以外からインターネットに接続し、IIJ4UのSMTPサーバーを利用してメールを送信する場合には、送信する前に受信操作による認証を行う必要がある。
OCN
OCN以外のネットワークから、OCNのSMTPサーバーを利用してメールを送信する場合には、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。受信操作を行った後30分間は送信が可能になる。回線を途中で切断した場合には、再度POP認証を受ける必要がある。
DreamNet
DreamNetのSMTPサーバーは、他社プロバイダーのアクセスポイント経由やLAN経由では利用することができない。
ASAHIネット
ASAHIネットのアクセスポイント以外からインターネットに接続して、ASAHIネットのSMTPサーバーを使ってメールを送信する場合は、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。受信操作を行った後10分間は送信が可能になる。回線を途中で切断した場合には、再度POP認証を受ける必要がある。
BIGLOBE
BIGLOBE契約外のメールアドレスをFrom: に記入して、BIGLOBEのSMTPサーバーを使ってメールを送信することができない。他ユーザIDでのダイヤルアップIP接続およびBIGLOBE以外のネットワーク経由での接続の場合、BIGLOBEのSMTPサーバーを使ってメールを送信するためには、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。一度に送信できる宛先の数は300件まで、メールの最大サイズは1通につき5MBまでと制限されている。